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”青と緑の8番” が試合を支配できる理由

― サッカーにおける「言語化する力」と「考える力」の役割とは ―

ピッチの中央で、静かに試合を動かす彼。

彼がどこかに駆け上がるたびに試合のテンポが変わり、一つのパスで流れが前へと傾く。
何もしていないように見える数秒が、次の得点に直結する。

一見すると控えめなプレーに見えるかもしれない。
しかし、ピッチの“空気”を支配しているのは、間違いなく彼だ。

彼のような選手は、どうしてあんなにも “判断が速くて的確” なのか。
身体能力? 経験? もちろんそれもあるだろう。
でも、それだけではない。

そこには、言語化する力、戦術を理解する力、そして考え抜く力という、“見えない思考の土台” がある。

1. 言語化する力
― プレーを再現できる頭脳 ―

彼のインタビューを聞いたことがある方なら、その “言葉の明確さ” に驚かされたことがあるかもしれない。
話し方は落ち着いていて淡々としているが、その内容は非常に具体的だ。

たとえば、こんなふうに語る。

「相手の左サイドバックが前に出ていたので、その裏のスペースを使いました。」

「味方がパスを受けづらそうだったので、自分が一度中に入り、攻撃のリズムを組み直しました。」

感覚だけで動いているのではなく、「なぜそうしたか」にちゃんと理由がある。
そしてそれを自分の言葉で説明できる。それこそが、彼が “本当に頭の良い選手” である理由だ。

言語化する力があると、自分の判断を客観的にとらえ整理することができる。
うまくいった場面も、うまくいかなかった場面も、次の判断につながる「再現性」に変えていける。

偶然の成功に頼るのではなく、「なぜうまくいったのか」を理解し自分の中に残していける。

言語化とは、経験を “再現可能な力” に変えていく静かな技術。
それは、プレーの深さを支える頭脳の働きなのだ。

2. 戦術を理解する力
― “全体”を見て動ける選手 ―

ピッチの中にいるのに、まるで上空から全体を見ているようにプレーする彼。
その判断には、常に “全体の構造” がある。

相手がどんな形で守っているのか。
味方はどこに立ち、どこに動こうとしているのか。
どこにスペースが生まれ、どこに人が足りないのか。

そのすべてを踏まえて、自分の立ち位置や動き、パスの強さまでも調整している。

サッカーは、個人の技術だけで成立するスポーツではない。
チーム全体の文脈を理解していなければ、どんなにうまくても “浮いた存在” になってしまう。

戦術理解とは、「目の前で起きていること」を言語的にとらえる力。
頭を使って “文脈” を読める選手は、見えているものの数が違う。

自分だけではなく、全体の一部として物事をとらえられる視点の広さ。
それが、ピッチの中での一手一手を支えている。

3. 考え抜く力
― 迷わず選べる思考の積み重ね ―

前に出るか、いったん下げるか。
リスクを取るか、安全策を選ぶか。

サッカーの中には、常に複数の選択肢がある。
そして彼は、そのなかで迷わず選び、行動できる。

それは、たまたま “勘がいい” わけではない。
「なぜ?」を積み重ねてきた人だけが持てる判断力だ。

たとえば──

  • なぜ、あの場面でパスを選んだのか?

  • もし別の選択をしていたら、どうなっていたか?

  • チームとしては、どういう流れがよかったのか?

そういった問いを、日々の中で考え続けることで、判断の精度は磨かれていく。

考える力とは、「迷わないための知識」ではない。
迷ったときに、自分なりの理由で決断できる力だ。

その積み重ねこそが、判断にブレのない選手をつくり、ミスを引きずらない強さを育てる。

4. サッカーにおける「言語化する力」と「考える力」
― その役割と、磨くためにできること ―

彼の判断力を支えているのは、反射神経や感覚ではない。
そこには、「見て、考えて、言葉にして整理する力」がある。

一瞬でプレーを選べる選手は、
その裏で何度も「なぜ?」「どうして?」と問いを立てている。

言語化できる選手は、自分のプレーを振り返ることができ、
考える力のある選手は、ミスを成長の糧にできる。

これらは、生まれつきの才能ではない
練習・試合・その前後の “思考の時間” の積み重ねで育つ力だ。

たとえば──

  • 試合のあと、自分のプレーをふり返ってみる

  • 「何を見て、何を選ぼうとしたのか」を考えてみる

  • コーチや仲間に、自分の判断を言葉で説明してみる

それだけでも、思考の根が深まっていく。

そしてこうした力は、サッカーの外でも磨かれる

  • 学校であった出来事を、自分の言葉で話す

  • 本やニュースを読んで、自分なりに考えて説明する

  • 失敗に対して「なぜ?」と向き合ってみる

そういった日常の中の問いと対話が、
ピッチでの判断にやがて静かに表れてくる。

自分で問い、自分の言葉で整理し、納得したうえで動ける人へ。

それが、“判断で試合を動かせる選手” への確かな一歩になる。

※筆者は、阿南市才見町で『明石塾』という学習塾を運営しています。
当塾では、子どもたちが自分の言葉で考え、納得して選べるよう、「国語力の育成」「論理的思考力の土台づくり」に力を入れています。
この記事の内容にご関心をお持ちの方は、当塾のHPもご覧いただければ幸いです。